遂に、新しき詩歌の時は来たりぬ。

 そはうつくしき曙のごとくなりき。あるものは古の予言者の如く叫び、

あるものは西の詩人のごとくによばはり、いづれも明光と新声と空想とに

酔えるがごとくなりき。

 うらわかき想像は長き眠りより覚めて、民俗の言葉を語れり。

 伝説は再びよみがえりぬ。自然はふたたび新しき色を帯びぬ。

 明光はまのあたりなる生と死とをてらせり、過去の壮大と衰退とを照らせり。

 新しきうたびとの群の多くは、ただ穆実なる青年なりき。その芸術は幼稚

なりき、不完全なりき、されどまた偽りも飾りもなかりき。青春のいのちは

かれらの口唇にあふれ、感激の涙はかれらの頬をつたいしなり。こころみに

思へ、清新横溢なる思潮は幾多の青年をして殆ど寝食を忘れしめたるを。

また、思へ、近代の悲哀と煩悶とは幾多の青年をして狂せしるめたるを。

 われも拙き身を忘れて、この新しきうたびとのの声に和しぬ。

 詩歌は静かなるところにて思ひお越したる感動なりとかや。げにわが

歌ぞおぞき苦闘の告白なる。

 なげきと、わずらひとは、わが歌に残りぬ。思へば言ふぞよき。ためらはず

して言ふぞよき。いささかなる活動に励まされてわれも身と心とを救ひしなり。

 誰か旧き生涯に安ぜんとするものぞ。おのがじし新しきを開かんと思へるぞ、

若き人々のつとめなる。

 生命は力なり。力は声なり。声は言葉なり。新しき言葉はすなはち新しき

生涯なり。

 われもこの新しきに入らんことを願ひて、多くの寂しく暗き月日を過ごしぬ。

 芸術はわが願いなり。されどわれは芸術を軽く見たりき。むしろわれは芸術を

第二の人生と見たりき。また第二の自然とも見たりき。

 ああ、詩歌はわれにとりて自ら責むるの鞭にてありき。わが若き胸は溢れて、

花も香もなき根無し草四つの巻とはなれり。われは今、青春の記念として、

かかるおもひでの歌ぐさかきあつめ、友とする人々のまえに捧げんむとはするなり。


                                                島崎藤村

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 高校時代、わたしは国語の教科書を丸暗記するほど読んだのでした。中でもこの

藤村の若菜集その他の合本詩集の巻頭言は、好んで暗記したものの一つでした。

このうつくしい文体とリズム感、藤村の若々しい意気の溢れる内容は、いつまでも

私の脳裏にやきついて離れませんでした。

 あれから、もう、何十年でしょうか・・・。私は、もう、おぼえていたことさえ、わすれ

かけていたのでした。

 夫に旅立たれて三年。このたびの帰国のあいだ、私は、夫との数多くの思い出の

ものを整理しました。すでに忘れかけていた藤村の巻頭言に、捨て去ろうとした数々の

本の中で出会いました。ふたたび・・・・。

 この巻頭言の中に、私の生き様のルーツがあるのを感じました。そして、しらずしらず

記憶の奥底に沈み込ませていた思い出を呼び覚ましていました。なにか、急に嬉しく

なってしまいました。

 それでみなさまに、この藤村の瑞々しい感性をお届けする事といたしました。

 酔歌祭を会費制としたにも関わらず大勢の方々にお越し頂け、楽しいひとときを

過ごすことが出来ました。此は、ひとえにわたしの多くの友人達の助力に寄るものです。

本当にありがとうございました。

 バンクーバーはクリスマスイルミネーションの輝く素晴らしい冬の始まりです。

ぜひ雪が降ってほしいと言うのが、ホワイトクリスマスを期待するバンクーバーっ子の

のぞみですが・・・。はてさて、スノーメンはどこへいったやら・・・・・・・・・。


            Cliffrose 亭 亭主 柳谷千恵子   


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Love from Chieko Yanagitani in Greater Vancouver
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1、旅立ちの日
2、蜂鳥
3、クリフローズ通信をお届けします
4、ヘンケルの牛刀
5、新春笑い話をお届けしましょう
6、出版のごあいさつ
7、I got landed immigrant status
8、小さな総括
9、裏の庭でつくしを見つけました
10、April 4 '00: イリーナの話
11、July '00: Vancouver便り
12、Oct. 29 '00: 酔歌祭のこと
13、Nov. 26 '00: 藤村の根無し草四つの巻の序
14、Sep.16 '00: I got new boyfriend.
15、Mar. 15 '01: 素晴らしい春の始まり
16、Oct. 11 '01: 酔歌祭
17、アドレス変更のお願い
18、Dec. 22 '01: 酔歌祭の御礼
19、Jan. '02: A Happy New Year to Everybody.
20、Mar. 20 '02: 息子たちへ
21、今旅立とうとしている母へ
22、「すばるのかなた」ご出版に寄せて
23、柳谷千恵子油彩小品展のお知らせ
24、柳谷千恵子油彩小品展の御礼
25、Cliffrose Letter Jan. 1.2003 :あけましておめでとうございます
26 Cliffrose Letter March 13 2003 停電 in Canada
27 Cliffrose Letter Nov.19.'03 息子の来加
28、Cliffrose Letter Dec.28 '03 眠れない夜は・・・。
29Cliffrose Letter Oct.6.2004 食い物の話
30..Cliffrose Letter Oct.25 2004  個展のご案内
31.Cliffrose Letter Dec.30. 2004 昨日はどこにもありません。
32.独り女の独り言
33.死生観
34.数々の出会い
35.Feel Guilty
36.旅立つ親友太田則子へ送る言葉
37.映画の話
38.狭い地球
39.英語でのコミュニケーション 将城
40.モーツアルトとサリエリとChieko
41.商売と信頼関係 将城
42.VOL.36 Cliffrose Letter Dec.30.'05 平穏・平凡・平和
43.Cliffrose Letter vol. 37 - 年賀状とクリスマスカード

44.Mr.Revenko& Mr.Ohyama  

45.Cliffrose Letter vol. 38 ‐ 謙譲の美徳と外国人
46.Vol.39 Cliffrose Letter Feb.18.'06 春のお知らせ
47.Vol.39 Cliffrose Letter Feb.18.'06 花のお知らせ
48.Vol40 Cliffrose Letter Apr.22.'06 イゴール氏と大山氏
49.Mr.Ohyama's Mail
50.Vol.41on Jun 25, 2006 - 住みやすいのはドッチ?日本vsカナダ
51.Vol.42 「崖の薔薇」と町名変更訴訟雑感
52.Vol.43  クリスマスって何の日?
53.Vol.44  Cosmopolitan  コスモポリタン
54.Vol.45 遅い夏の訪れ
55.Vol.46 バンクーバー外食事情
56.Vol.47大根おろしと「ちりとてちん」
57.Vol.48 あけましておめでとうございます
58.Vol.49カナダ人の日本語理解度
.59.Cliffrose Letter Vol.48 あけましておめでとうございます
60.Cliffrose Letter Vol.50 2008.Apr. 世代交代のとき?
61.CliffroseLetter Vol.52 29.Aug.:2008 一粒のトマトの種もし死なずば・・
62.CliffroseLetter Vol.53 29.Aug.:2008 匂いの野菜
63.CliffroseLetter Vol.54 5.Oct.2008 フランス生まれのトマトその後
64.CliffroseLetterVol.55 ナイアガラとアメリカ
65.CliffroseLetterVol.56 リサイクルin Canada
66.CliffroseLetterVol.57 新年のご挨拶
67.CliffroseLetterVol.58 往く年来る年
68.Cliffrose Letter Vol.60 柚子の栽培とおからの話
69.Cliffrose Letter Vol.61 チビた鉛筆と蕗の薹 
70.Cliffrose Letter Vol.62カナダ産の新生姜 
71.CliffroseLetter.Vol.63 夫のいます山・Mt.Baker
72.CliffroseLetter.Vol.64 秋から冬へのカナダの風物詩
73. Cliffrose Letter vol. 65 年末のご挨拶 デフレ雑感
79.CliffroseLetter Vol 66. 今年得たもの無くしたもの  
80.CliffroseLetter Vol 67 日加サービス比較
81.Cliffrose Letter Vol .68  Cliffroseはひきこもり


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CliffroseLetter 1998_2009

Cliffrose Letter 2000 Nov. 26. 藤村の根無し草四つの巻の序。
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