Cliffrose Letter vol. 38 ‐ 謙譲の美徳と外国人

Masaki Yanagitani 柳谷 将城i 拝
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 皆様、こんにちは、一月も早いもので、もう三週間も過ぎま
したが、如何お過ごしでしょうか?

 バンクーバーは、相変わらず雨の多い日々で、連続降雨記録
の更新こそならなかったものの、うっとうしい毎日が続いてお
ります。

 そんなある日、友人のカナダ人と話していると、彼女が娘さ
んの写真を見せてくれました、そして、自分の娘は学業優秀で、
よき友達もたくさんおり、明るく健康で…、というように延々
と娘の自慢を始めたのです。もちろん英語で話していたので、
こっちもはいはい、それはよかったですね、といった感じで、
返答していたのです。
 ここまで読んだ貴方は、もしかすると、彼女は鼻持ちならな
い自慢たれで、しょうがないなあ、と思ったかもしれません。 
かくいう私も、少しうんざりしかけました。
 でも、彼女はごく普通のカナダ人で、家族思いの、とても親
切な方です。 

 では、どうして、私を含む日本人は、このような他人の家族
の自慢を、不快に感じるのでしょうか?それは、日本文化の中
に、自分と自分の身内をへりくだることにより、相手を尊重す
るという謙譲の美徳が根強くあるからなのです。日本人の感覚
としては、欲しくても「遠慮いたします」、すばらしい妻でも
「愚妻」なのです。
 一方、多くの白人文化圏の国々では、謙譲の美徳というもの
は、ほとんど存在しないのです。私も何度か外国人に説明を試
みましたが、なかなかわかってもらえないことが多いです。彼
らの感覚としては、YESはYES、NOはNO、よいものはよい、悪い
ものは悪いのです。
 だから、当然自分の家族に優れたところがあれば、正直に言
いますし、もちろん悪いところも正直に言います。
 
 考えてみると、非常に素直で正直な態度の顕れですから、何
も悪いことはないのですが、個人的には釈然としないものが残
ります。でも、慣れとは恐ろしいもので、こんな私も、英語を
話しているときは、謙譲の美徳などすっかり忘れて、厚かまし
くしゃべっているのです。日本語を話すと元に戻るのですが。
あたかも二重人格のような感覚に陥っております。

 vol. 33のレターで述べましたように、英語を話すときは、厚
かましいほうがよいというのも、結局、謙譲の美徳が、英語を
話すときに通用しないということを意味するのです。奥ゆかし
く黙っていても、誰も「空気を読んで」くれませんし、「あう
んの呼吸」でお返しをしてくれることもないのです。

 いずれにしても、双方の文化の相違の問題ですから、優劣の
問題ではないと思います。ですから、いずれかが卑屈になるこ
ともありませんし、逆に尊大になることがあってもならないと
思います。でも、相互理解と尊重とよくお題目のようにいわれ
るものの、実践することは非常に難しいという事を思い知らさ
れました。
 皆様、日本文化を、カナダの白人に英語で紹介してみません
か?きっと、英語力のすばらしいステップアップが期待できま
すよ、とまた宣伝になりましたので、今日のところはここまで
にしたいと思います。